LEDデスクライトと蛍光灯における多重影・フリッカーの仕組みと対策
デスクライト選びにおいて、「多重影」と「フリッカー(ちらつき)」は、作業効率や目の健康に大きな影響を与える重要なポイントです。
本記事では、LEDデスクライトと蛍光灯それぞれの特性を比較しながら、これらの現象の原因と対策について詳しく解説します。
この記事の目次
AC(交流)をDC(直流)に変換する仕組み
LEDデスクスタンドは直流(DC)で動作するため、家庭用電源の交流(AC)を直流に変換する装置が必要です。
この変換は以下のプロセスで行われます。
整流(Rectification)
ACの波形(プラスとマイナスが交互に流れる)を、一方向の流れに変えます。
ダイオードブリッジと呼ばれる回路を使い、マイナスの波形をプラス側にひっくり返します。
この時点ではまだ「脈流」と呼ばれるギザギザの波形が残っています。
平滑化(Smoothing)
コンデンサという部品を使い、脈流のギザギザを滑らかにします。
コンデンサは電気を一時的に蓄える性質があり、波形のギザギザ部分を埋めて、安定した電圧に近づけます。
電圧調整(Regulation)
レギュレーター回路によって、一定の直流電圧を維持します。
これにより、LEDが安定した電力を受け取り、ちらつきのない光を放つことができます。
実際のイメージ
家庭用AC(サイン波) → 整流(波形が一方向) → 平滑化(滑らかに) → レギュレーション(一定の直流へ)
フリッカー(ちらつき)の発生原因
フリッカーとは?
LEDデスクライトの光が高速で明滅する現象を指します。
一般的に、フリッカーは肉眼では見えないレベルで発生しますが、脳や目はその明滅を感知しており、長時間使用すると目の疲労や不快感につながる場合があります。
LEDでフリッカーが発生する原因
不安定な交流電流
家庭用ACは一定の波形を持つものの、波形そのものが変化するため、そのままではLEDに安定した光を供給できません。
低品質なAC-DCコンバータ
安価な製品では、整流・平滑化の工程が不十分なため、リップル(波形のギザギザ)が残り、フリッカーが発生しやすくなります。
PWM(パルス幅変調)の周波数不足
調光機能付きLEDラデスクライトでは、PWM制御によって明るさを調整します。
この際、周波数が低いとちらつきが発生します。
蛍光灯でフリッカーが発生する原因
従来型蛍光灯(ラピッドスタート方式)
50Hzまたは60Hzの交流電源をそのまま使うため、電流の変動に伴って蛍光管が明滅します。
これが低周波フリッカーの原因です。
電子安定器(インバータ方式)
高周波点灯方式では、電流の周波数を20kHz以上に引き上げるため、フリッカーはほぼゼロになります。
フリッカーの人体への影響
目の疲労感
長時間使用すると、無意識に目が負担を感じるため、疲れやすくなります。
頭痛や肩こり
フリッカーを補正しようと脳が過剰に働くことで、体調不良を引き起こす場合があります。
集中力の低下
学習や仕事中の注意力を散漫にさせる可能性があります。
多重影とその原因
多重影とは?
多重影は、光源から物体に投影される影が複数重なる現象を指します。
LEDデスクスタンドと蛍光灯では、この現象の発生レベルが異なります。
LEDデスクライトにおける多重影の原因
光源の指向性と配置
LEDは基本的に真下方向への強い指向性を持ちますが、複数のLEDが異なる位置や角度で配置されている場合、それぞれが異なる方向に影を作り出します。
拡散パネルの有無
拡散パネルがない、または品質が低い場合、光が均一に広がらず、多重影が目立ちます。
蛍光灯における多重影の発生しにくさ
面光源の特性
蛍光灯は蛍光物質全体が光る「面光源」であり、広い範囲から光が発せられるため、影が柔らかく、重なりにくいです。
光の拡散性が高い
光が均一に広がるため、影がぼやけ、単一の影として見えることが多いです。
光源が一つで安定
蛍光灯の光源は一本のランプのみで、LEDのように複数の光源が重なることがありません。
多重影の影響
精密作業時に文字や細かい部分が見えにくくなり、作業効率が低下します。
影の複雑さが視覚的ノイズとなり、目に負担をかけます。
多重影の対策
拡散パネル付きの製品を選ぶ
光を均一に広げる機能がある製品を選ぶことで、多重影を抑えられます。
高品質な設計のLEDライトを選ぶ
光学的な設計がしっかりしている製品では、多重影が目立ちにくいです。
蛍光灯型デスクライトを選ぶ
影が柔らかく、重なりにくい面光源の蛍光灯タイプを検討する。
安価な製品におけるリスク
安価なデスクライトでは、次のような問題が起こりやすくなります。
ドライバの品質が低い
整流・平滑化が不十分で、フリッカーやリップルが発生します。
拡散パネルやレンズの省略
影や光のばらつきが多く、見え方が不均一になります。
寿命が短い
部品の劣化が早く、結果的にコストパフォーマンスが悪くなる可能性があります。
また、長時間使用することで目や脳、さらには全身に悪影響を及ぼす可能性があります。
まとめ
蛍光灯は光源が「面光源」であり、光の拡散性が高いことから多重影が出にくい設計となっています。
一方、LEDは「点光源」の特性から多重影が発生しやすいですが、高品質な製品では拡散技術の進化により、多重影を抑えた製品が増えています。
どちらを選ぶにしても、使用目的や作業環境に応じた光源の選定が重要です。